コネクターの原料となるリン青銅が入手困難になっている件
自作パソコン作ろうと思うんだけどPCパーツの値段上がったなぁ・・・
会社でも機械の長納期化が問題になっているけど何か関係あるのかな?
誰か教えてください!
- なんで電子機器が長納期化しているのかを知りたい人
- パソコンのパーツが値上がりしている理由が知りたい人
といった方に読んでいただきたい記事です。
結論だけでも読んでいただけると嬉しいです。
- 電子部品製造工場のトラブルにより納期が遅れている
- コロナにより電子部品の製造に遅れが出ている
- 材料の値上がりによりスムーズに製造できなくなっている
なぜパソコンパーツが値上がりしているのか疑問に思っている人におすすめの記事です。
世界的に半導体や機械部品が長納期化しています。
これはゲーム用グラフィックボードが値上がりし続けている理由でもあります。
世界の状況を理解して、今後の情勢に注目していきましょう。
少しでも気になった方は、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
電子部品製造に必要な半導体の需要が増している
コロナが影響するものやしないものと様々あります。
その中でも、需要が特に高いと言われているのは次の3つです。
- 5G関連(スマートフォン・クラウドサービスなど)
- 脱炭素関連(電気自動車・太陽光発電など)
- 巣ごもり需要(PC・家電)等
上記の3つの理由により、半導体の需要自体が大きく増加傾向にあります。
コロナによるロックダウンで電子部品が製造できない
ベトナムやマレーシアを始めとした東南アジアにおいてロックダウンが実施されています。
ロックダウンが起きると、工場も止まるので必然的に電子部品の生産も止まりますよね。
これにより生産拠点の縮小・工場操業停止等が発生しています。
そのため半導体の供給ラインに滞りが発生し、需要が増している市場に対応することができていない状況になってしまっているのです。
電子部品を製造している半導体工場の火災
北米寒波からのナイロン、ロシアメーカーのフッ素材料、上海ロックダウンでの塩ビ、燃油サーチャージ高騰。重なる輸入遅延。
— カンロちゃん(酒地蔵) (@BuddhistPunk888) April 21, 2022
電子部品の調達コストがとんでもなくなってきて在庫切れたら長期化する品ばかりなので、念のためマイク買っときました,よく分かんないからAKG D7S。
使わなかったら即メルカリ
2020年末から火災による半導体工場の操業停止が相次ぎ発生しました。
え、そんなトラブルも起こっていたんですか?
これにより電子部品製造の状況悪化に拍車をかけました。
- 2020年10月:旭化成マイクロシステム延岡事業所
- 2021年3月:ルネサスエレクトロニクスの那珂工場
- 2021年4月:半導体ファウンドリー※
※世界最大手のTSMCのFab 12B(第6期拡張ライン)
この火災により積み重なった電子部品受注案件の納期に大きな影響を及ぼしました。
旭化成マイクロシステムズは、1922年に設立された多角的企業グループである旭化成グループの一員です。
現在、同グループは、素材、住宅、ヘルスケアなどの事業分野をカバーし、幅広い製品とサービスを提供しています。
旭化成マイクロシステムズは、その名の通り、エレクトロニクスに特化した子会社で、スマートフォンやタブレット端末などに使われる部品やシステムを製造しています。
ルネサスエレクトロニクスは、マイクロコントローラ、アナログ、パワー、SoC製品におけるグローバルリーダーです。
2002年に設立された同社は、自動車、産業、家電、オフィスオートメーション、情報通信技術の各業界の幅広いアプリケーションに包括的なソリューションを提供しています。
同社の経営陣は、顧客の幅広いニーズに応え、無限の未来を形作ることに専心しています。
半導体ファウンドリとは、ファブとも呼ばれ、集積回路(IC)を製造する工場のことである。
その代表格が、1987年に設立され、現在も世界最大の独立系シリコン部品メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)である。
現在、サムスンとTSMCの設備投資額を合わせると、2021年には555億ドルに達し、受託加工市場での優位性を示しています。
電子部品を運ぶコンテナ不足による海上輸送の滞り
コンビニで売ってるパン 小さくなった気がする
— FROM (@TVIFLHAGBKEJUNE) July 5, 2022
やはり、コロナの影響。原油価格高騰。世界的なコンテナ不足による海上運賃の高騰。為替の急激な円安。それに伴い仕入れ原価の値上げ
企業努力でコストダウンに取り組んでると思うが、一向に落ち着く気配が見えない状況なんだとパンを眺めながら思った😭
世界的に空コンテナ不足が発生しています。
巣ごもり需要により、中国から欧米に向けての輸出が急増しましたが、欧米からの輸出が停滞していることにより世界的にコンテナ不足を引き起こしている状況です。
加えて、貨物船の船員が外国港で隔離措置が取られていることにより、コンテナ不足はさらに深刻化しています。
電子部品に関わる良いニュースが1つもありませんね。
コンテナどころか船便すら確保できないという状況もあるらしく、スムーズな海上輸送が妨げられてしまっています。
北米寒波による大規模停電が電子部品製造へ影響
北米寒波からのナイロン、ロシアメーカーのフッ素材料、上海ロックダウンでの塩ビ、燃油サーチャージ高騰。重なる輸入遅延。
— カンロちゃん(酒地蔵) (@BuddhistPunk888) April 21, 2022
電子部品の調達コストがとんでもなくなってきて在庫切れたら長期化する品ばかりなので、念のためマイク買っときました,よく分かんないからAKG D7S。
使わなかったら即メルカリ
これによりコネクタの樹脂製造に影響が発生しています。
2021年2月、米国にて記録的な大寒波があり、その影響で大規模停電が発生しました。
停電により、ナイロン樹脂の特性向上に欠かせないポリアミド材を製造する化学メーカー(世界シェア80%)のラインが1か月間操業を停止しました。
自然災害の影響も受けていたんですね。
不運としか言えないですよね。
そのため同社より供給を受けていたナイロン樹脂メーカー各社が、こぞって安定供給が不能となり、「不可抗力の宣言」を発する事態になりました。
不可抗力の宣言とは、異常事態により当事者の一方または両方が契約上の義務を直接果たせなくなった場合に、両者が契約上の義務から解放される契約上の条項のことです。
不可抗力の例としては、自然災害、パンデミック、不可抗力、その他合理的に予測・制御できない事態が挙げられます。
不可抗力条項の範囲と効果は、特定の契約の明示的な条項によって異なります。
現在はこのポリアミド材の供給は復活してますが、ナイロン樹脂メーカーは停止していた間に膨れ上がった多大な受注残の消化に追われている状況です。
電子部品で必要なリン青銅問題
銅の値段が不透明になっており、銅の受注が凍結されるような事態も発生してきています。
そのため電子部品のコネクタピンに影響が発生し、コネクタピンが必要な電子部品の長納期化を招いてしまっています。
ちなみに、中国はリン青銅の主要生産国の一つであり、2020年だけでも1,000万トンの生産が見込まれています。
さらに、リン青銅は世界各国で広く使用され生産されていて、インド、米国、日本もそれぞれ相当量のリン青銅を生産しています。
関連ニュース:銅価格が急騰、相場安定が喫緊の課題に
ステンレス材料(SUS304系)も長納期化して深刻化してきている話
ESG投資 14%のファンドがロシア資産保有 天然ガスをグリーンに分類、ニッケルなどEV関連投資でもロシア資産を買っていた。 これ全損する可能性が高く、ESGファンドも破綻リスクを抱えたことになります。 ESGやグリーン投資 ロシアや中国にとって有利な世界を作るためのものだった。
— 渡邉哲也 (@daitojimari) March 8, 2022
ニッケルが最高値、一時9割急騰 ロシアの供給不安で(日本経済新聞)
客先に製品の納期遅れを説明しなきゃいけないのに、何がどのように長納期化してるんだろう?
どう説明すればいいのか全く整理できてません。
てか、なんでステンレスまで長納期になってるんだー!
もう訳が分かりません!
仲良く取引させてもらっているメーカーの営業担当さんから興味深い話を聞きましたので、大まかな概要を紹介したいと思います。
製品の長納期化に関わる話なので、機械を取り扱うシステムエンジニアの方は必見です。
また、ロシア以外にニッケルを生産している国にについて紹介します。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻影響でニッケルに影響が出ている
車のバッテリーに使用されるニッケルの世界生産量第3位がロシア。しかも、EVに使われる高純度ニッケルとなると世界の2割はロシア。コバルトも世界第2位(シェア6.3%)、パラジウムに至っては世界1位(シェア42.9%)で、経済封鎖のつもりが世界の経済が封鎖されているわけか・・・
— ぬまきち (@obenkyounuma) June 27, 2022
ロシアのウクライナへの軍事侵攻影響により、オーステナイト系ステンレス材料に使用しているニッケルの入手が、非常に困難な状況となっているようです。
ニッケルは、わずかに金色を帯びた銀白色の金属で、高い研磨性がある。
キュリー点と呼ばれる358℃までは強磁性体である。
ニッケルは腐食しにくいので、他の金属のメッキに使われ、損傷を防いで耐久性を高めている。
アルカリに強く、強酸とは通常の条件下でゆっくりと反応し、水素を放出してNi2+イオンを形成する。
また、ニッケルは主にステンレス鋼や、ニッケルとクロムに少量のケイ素、マンガン、鉄を加えたニクロムなどの合金の材料として使われている。
ニクロムは赤熱しても腐食しにくいので、電気オーブンやトースターによく使われている。
それにより、ステンレスを材料とした部材の長納期化が心配されています。
ステンレスは日常生活の中でも欠かせない素材ですよね。
ステンレスが使われている日用品が値上がりしないか心配です。
また「ニッケルの入手が困難になるのではないか?」という心配から、市場のニッケル価格が高騰してきています。
- SUS304厚板
- SUS304パイプ
- SUSU304L
取り扱っている商品の中で、ステンレスやニッケルが使われている部品があれば今後は要注意です。
製品の納期が間に合うとしても、材料の価格(コスト)が上がることも予想されます。
実際にニッケルのチャートが上昇していることが確認できるため、信憑性は高いと言えます(2022/4/15現在)。
ステンレス鋼板4%値上げ 日鉄ステンレス、3月契約分(日本経済新聞)
ロシア以外にニッケルを生産している国
ロシアのウクライナへの軍事侵攻影響によりニッケルへ影響が出ていますが、ロシア以外にもニッケルを生産している国はあります。
- カナダ
- ニューカレドニア
- オーストラリア
- インドネシア
- キューバ
- 中国
- 南アフリカ
- ドミニカ共和国
- ボツワナ
- コロンビア
- ギリシャ
- ブラジル
その中でも重要なニッケル精錬所がある国は次の5か所です
- ノルウェー
- フィンランド
- フランス
- 日本
- イギリス
戦争の影響で、今後の電子部品の納期はどうなるのか
戦争の状況が刻々と変化しているため、答えるのが難しいのですが、現在の紛争の状況から、いくつかの予測を立てることができます。
戦争している地域では資源の輸送が困難なため、その地域で生産されている資源の納期が延びる可能性が高いです。
また、戦争が起こっている地域では工場などもまともに稼働させることができないため、電子機器製造に大きな影響がある思われます。
そのため、今後も電子部品の納期が大幅に遅れる可能性があると思われます。
コネクタなどの電子部品が長納期化している理由を理解して立ち回りましょう
電子部品やステンレス材料(SUS304系)の入手が困難になっていることについてまとめてみましたがいかがだったでしょうか?
徐々に良くなっていくとは思いますが、市場のダメージはとてつもなく大きかったようです。
ステンレスの製造に必要なニッケルの世界的シェアはオーストラリアが大半を占めているので、オーストラリアなどの他ルートを開拓する必要も今後出てくるかもしれません。
ただし、そのルートが整備されるまでの間は、ニッケルの価格は上昇傾向にあるかもしれませんね。
今はいろんなしわ寄せがきているだけだとは思いますが、今のうちに世界情勢をしっかり理解して、今後の仕事のやり方を見直しておきましょう。
その中で、リスクなどを整理しておきながら、今後の世界の動きに注目していきましょう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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